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デジタル大辞泉 (小学館)

今回の開発担当者 木下誠/中田満 @HMDTオフィス(2011.6.7)

木下 大辞泉はもうずいぶん長い間、やっています。
   一番最初に小学館の方から連絡を頂いたのが2008年8月で、
   そこから開発がスタートして、最初のバージョンのリリースが
   2008年11月25日でした。
   ちょうど、2年半前です。まだ、2年半しかたってないのか…
   最初は名前が違ったんですよ。「デジタル大辞泉2009i」という名前でした。

中田 僕が開発に参加しはじめたのがver.3.0向けにやっていた、
   2009年8月あたりでした。

木下 そこから二人でやってる感じです。

中田 今、大辞泉の最新版はver.8.0です。(2011.6.7現在)

木下 これは、わかりにくいところなんですが、
   大辞泉のバージョン番号は、機能ではなくて
   辞書の内容で更新しています。
   その点は、他のアプリとは違うところです。
   他のアプリの場合、ユーザーインターフェイスを変えると、
   機能変更なのでバージョン番号も変更するんですが、
   大辞泉の場合は「ver.7.0」から「ver.7.1」にバージョンアップした時に
   ユーザーインターフェイスが、過去のものから
   「ブックインターフェイス」になったけど、
   内容は変更していないので「ver.7.0」から「ver.7.1」に変更、
   という形でした。
   通常なら、ver.8.0としたいところだったんですけど。

DV_04.pngDV_04.png
↑「ブックインターフェイス」ver.7.1

中田 大辞泉は1年に3~4回更新してます。
   定期的に更新して、2年半でver.8.0まできました。

木下 最初のver.1.0のときに「検索時間が1秒以内」
   というのを開発目標に掲げていました。
   辞書アプリだから、検索の語数が多くて、最初のバージョンが23万語。

中田 現在25万語なので、2万語くらい増えたんですね。

木下 それを素早く検索できなきゃいけない! というので
   目標を「検索時間1秒以内」に設定して、
   それで開発を始めたんです。で、実際には
   0.5秒(500ms)くらいで検索できるようにできました。

ー速いですね!

木下 最初の段階で徹底的に高速化を図ったから
   iPadで検索したらものすごく速いことになって。

ー紙で調べるより速いですもんね。

二人 圧倒的に速いですよ!!

中田 実際の辞書はこれだけの分量ですから(辞書を取り出す)

DV_09.jpgDV_09.jpg
↑この分厚さ! 0.5秒で引くのは至難の業

木下 辞書アプリとしてみると、ver.1.0で
   機能としては完成してたんですよ。
   でも、更新の時に出た目標が
   「辞書を超える辞書アプリを作ろう!!」ということだったんです。
   他の競合の辞書アプリもあるし、
   標準で辞書が搭載される可能性もあったし、
   単なる辞書機能としてだけなら、そこで終わってしまう。
   そうではなくて、
   「辞書を超えたもの」「辞書のデータを使って何かできないか」
   ということを考え続けました。
   もちろん、辞書機能自体のブラッシュアップは続けていたけれども、
   それ以外の機能も色々試していました。
   そこで、最初に考えたのがゲーム機能。

中田 「難読語」と「クロスワード」です。
   「難読語」は難しい漢字でぱっと読めないものを表示して
    読みがなを入力する、というもの。
   「クロスワード」は大辞泉の中に含まれている語釈で
   自動的にクロスワードパズルを作成して
   それを入力して遊ぶ、というものです。
   その2つは「大辞泉GAME」という形で無料アプリで出しています。

木下 後は「多辞書連携機能」ですね。

中田 「多辞書連携」は複数の辞書をまたいで検索できる機能で、
   国語辞典では「大辞林」が対応しています。
   「大辞泉」で引いた言葉が、「大辞林」ではどう説明してあるのか、
   という比較をしたり、
   後、「大辞泉」にあるけど「大辞林」にはない、という
   意地悪なひきかたをしたり(笑)
   「大辞泉」は少しは英語で引けるので
   英和・和英辞典も対応しています。

IMG_1468.PNGIMG_1468.PNG
↑iPhone版 多辞書連携機能

木下 ユーザーの使い勝手を考えたり、
   辞書好きの方で、多数の辞書で言葉を調べたい、という人には
   とってもいい機能になりました。
   このように、いろんな機能を追加して
   「大辞泉」を強化していっています。

   そうこうしているうちに、iPadが登場(2010年5月28日に日本発売)
   したので、「大辞泉」もiPad対応を行って出したのがver5.1です。

   この時はiPhoneの既存のユーザーインターフェイスを
   少し、拡張する形でiPadに対応しました。
   その後、今回出たver7.1から大幅にインターフェイスが変わって
   現在の「ブックユーザーインターフェイス」
   と呼んでいるものになりました。

DV_01.jpgDV_01.jpg

   通常の「検索」以外にも「画像表示」や「地図表示」「索引表示」
   という機能がつきました。
   今までも、検索の中で地図を表示することは出来ていましたが
   今回のように、まとめて表示という形は初めてです。

中田 地図自体から検索できる、というのも初めて付けた機能です。

木下 この「ブックインターフェイス」が本当に難しかったです。
   縦画面と横画面の両方に対応する、というのが結構大変だった。
   この、難しさを説明するのが、また難しいんですけど…

ー普通に縦で表示するものを、そのまま横の表示に変更する、という
 そういう単純なことではないんですか?

木下 そういうことじゃなかったんです。
   縦だと、1ページしかないものが、横だと2ページになるんです。
   このときに横と縦のどちらか固定されていればいいんですけど
   横で2ページ状態になっているものを縦に回転させたときに
   どの状態を引き継いで、その後の遷移をどうするのか、を考えるのが
   非常に大変でした。

ーその際に一番大変なことは、何に重きをおいて残すか?
 ということですか?

木下 こういったユーザーインターフェイスは
   今までになかったので、正解例がなかったんです。
   写真をグリッド状に並べる、ということはiPad標準でついているし、
   写真アプリケーションや、その他のアプリでもやっているけれど
   2ページの表示にして、左ページにグリッドがあって、
   右ページに言葉を表示する、という形は、見たことがない。
   更にそれが縦と横の両方に対応、となると、
   そんなアプリが今までになかったので
   いったいどのように遷移するのが、
   ユーザーにとって一番わかりやすいか、
   ということを試行錯誤しました。

DV_05.pngDV_05.png
↑縦表示

DV_03.pngDV_03.png
↑横画面でこのような表示方式はアプリ史上初!

ーアイデアを考えてから形にするのに、
 どのくらいの期間を要したんですか?

木下 2010年5月の最初のiPad対応時に、
   「これじゃあんまりよくないね」って話になって
   この「ブックインターフェイス」のアイディアが出てきたのが
   8月くらいです。
   そのときに既に、「検索」「画像」「地図」「索引」のタブは
   いれることに決めていました。
   そこから、デザイナーの人にデザインを書き起こしてもらったんですが、
   これが、とっても気合いの入ったデザインで(笑)
   タブが5つあって、切り替えを行うときにページが段々細くなっていくんですよ。
   「凡例」のときのページのカーブと、
   他のタブに切り替わったときのページカーブは違うんです。

中田 本当の本をめくっているみたいな感覚になるんです。

ーおぉ! 本当だ!

DV_07.jpgDV_07.jpg
↑「凡例タブ」 赤丸に注目

DV_08.jpgDV_08.jpg
↑「検索タブ」ページのカーブ具合が違います

木下 なので、これは全部のページ分の
   ページ画像を用意しているんです。
   検索用のページ画像、凡例用のページ画像……って。
   最初は1つの画像で使えるように考えていたんですが
   どうしても奇麗に表示しなくて、それだったら、全部用意しよう! 
   ということになりました。
   横も同様です。

ー気づかなかったです……

木下 デザイナーの人がそこに気合いを入れてくれたので……

ーその分開発にも、そこに気合いを入れて作ったと。

木下 そうそう!
   開発自体は2010年の10月くらいから本格化して
   本当は年内に完成予定だったのが少し遅れて、
   年明けに完成して、iPad2の発売にあわせて、いざリリース!と思ったら
   震災のためにiPad2の発売が延期したので
   それにともなって「大辞泉」も延期して無事発売しました。

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↑苦労を思い出しつつ、笑顔で熱弁中の木下氏(左)と中田氏(右)

ー今後の展開はどのように考えているんですか?

中田 今後は、iPhone版をどうしていくかな、というのを考えてます。
   iPhone版はそんなに機能をいれないように、
   と思っているんですが、iPadに比べてしまうと、
   見劣りしているところもあるので、そこはどうにかしたいな、と
   考えています。

木下 機能はiPad版と一緒にしたいよね。
   現状のiPhone版だと「検索」と「画像」のみなので
   「地図」と「索引」もいれたいですよね。

中田 iPad版の「地図」からの検索はとても面白いですからね。

木下 iPad版に関しては、辞書機能は
   これからも地道にブラッシュアップを続けるんですが
   「普通の辞書アプリには終わらない、辞書アプリを超える機能」を
   これからもどんどん追加していきたいな、と思っています。


ー具体的なアイデアは既にあるんですか?

木下 ここでは内緒ですけど、いっぱいあります!!
   ユーザーの方が驚いて、喜んでもらえるものをこれからもどんどん作っていきたいですね。